7月21日週報巻頭言「フランスのキリスト教」

▲7月26日からパリでオリンピックが開催されます。この機に「ノートルダム寺院(教会)」でも有名なパリに行かれる方もありましょう。パリも酷暑みたいなので私は行きませんが、今日はフランスのキリスト教事情を紹介します。▲基本的にカトリックが人口の7割ですが、実際に教会に通っているのは内1割とみられます。プロテスタントは人口の1%ですが、歴史的に重要な人々を生んでおり「狭き門」で有名なジッド、哲学者リクール、映画監督ゴダール、自動車産業のシトロエン家やプジョー家等があげられます。プロテスタント各派は、「カルヴァン派」を中心に「ルター派」「聖公会」「バプテスト」等です。▲ルターらによって始まった16世紀「宗教改革」の流れはフランスにも広がりますが、歴代の国王により迫害されます。しかし、ジュネーブから祖国フランスの宣教を進めたカルヴァンらの影響により信徒が増え続けました。▲16世紀後半にはカトリックとプロテスタントの対立が宗教戦争を引き起こしますが、覚えてほしいのは、戦争を引き起こすのは君主や貴族の対立による経済問題、差別問題によるものです。▲16世紀末には王令によりプロテスタントは部分的容認を得ます。部分的とはいえ、一国一宗教が当然であった時代には画期的なことでした。▲その後も対立は続き、ルイ13世の時にも宗教戦争が勃発しております。ファシズムが台頭した20世紀にはフランスもナチスに占領され、ユダヤ人迫害が起こります。この時、同じく迫害を受けた歴史と記憶を持つプロテスタントはユダヤ人保護のために積極的な活動をいたしました。▲1960年代のカトリック第二バチカン公会議以降、カトリックとプロテスタントは和解の道を進み、現在、両者は友好的関係を持ち、宗教的立場から共同で社会にメッセージを発することが多くなっています。▲フランスでは政教分離が徹底されすぎ、若年層には常識的な宗教的知識が欠ける傾向があり(日本もそうだけど)問題とされます。また、イスラム・テロ事件の頻発によって穏健なイスラム市民(事件を起こすのは極一部の過激派)への風当りが強くなり、カトリック・プロテスタント共に共同して保護を訴えていますし、フランスのキリスト教、ユダヤ教、イスラム教の代表者は折にふれて合同の会議を開いているとのこと。▲そのような背景も考えつつ五輪を観たいものです。
(献・上記内容は聖学院大学 和田光司教授<日本基督教団小金井緑町教会員>による)

2024年07月20日